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Saito1.jpg漢方・東洋医学的健康相談とセンサリー・アウェアネスというソマティック・サイコセラピーをさせていただいている斉藤由香です。

ソマティック・サイコセラピーって何だろう?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回この場をおかりして、「ソマティック・サイコセラピー」について少しお話したいと思います。

ソマティックという言葉は、もとは古代ギリシア語の「身体」をあらわす言葉、soma(ソーマ)からきています。ここでいう「身体」は「body」とは少し意味合いが異なります。通常bodyは外側から客観的にとらえられる身体のことを指します。一方、somaとは自分の内側から感じられる身体のことを指します。例えば、切断された腕はbodyの観点からみれば依然として「腕」という身体の一部ですが、somaから考えればそれはもはや身体の一部ではありません。(幻影肢などの場合はまた別ですが)。なぜなら、somaにおいては「見える」ことではなく、「感じられる」ことが重要だからです。これについてもう少し詳しくお話したいと思います。


ところで、内側から感じられる身体って、どういうことなんでしょうか?

自分の内側を感じるための感覚を身体感覚といいます。身体感覚には、内臓感覚、固有感覚など、さまざまな感覚が含まれます。
内臓感覚とは文字通り内臓の感覚です。例えば緊張状態にあるときには、自分の心臓がいつもよりも早くなっているのが感じられますよね?そんな感覚のことです。
固有感覚とは自分の身体が今、どんな状態にあるかを知覚する感覚のことです。例えば目を閉じていても真っ直ぐに立っていられるのは、自分の身体が無意識のうちに地球の重力と自分の姿勢とのあいだでバランスをとっているからです。また鉛筆を握ろうとするときには、手の指はちょうど鉛筆の太さに合うように自然に円を形作りますし、誰かを振り向かせようと軽く肩を叩くときには、無意識のうちに相手の肩と自分の腕の距離を測り、適度な角度でその肩を叩くでしょう。こんな動作にも固有感覚の働きが関与しています。

他にも皮膚感覚なども内側の感覚といえるでしょうし、現在分かっているだけでもこれら以外の感覚がいくつかあります。


つまり内側から感じられる身体とは、こうした身体感覚を通して、わたしたちが自分自身の内側に注意を向けたときに感じられる身体、いわば目を閉じた状態でも感じられる自分自身の身体であり、さらに言えば自分がいま・ここに存在しているという存在感のようなものをさします。

ソマティック・サイコセラピーの根本的な考え方では、この「感じられる身体」には、私たちが気づかずにいるたくさんの知恵や、生きるために必要なバランス感覚や、多くの情報の中から必要なものをより分けるセンサーや、危険を察知する直観力や、その他もろもろの素晴らしい能力が生き生きと息づいていると考えます。そこでこの潜在的な生きる力に気づき、伸び伸びと成長させてゆくことをセラピーの目標とします。

つまり、「感じられる身体」すなわちsomaに働きかけるということは、bodyでもmindでもなく、そのどちらをも含みこんだ私たちのより根源的な全体性に働きかけることになるのです。そして今まで気づいていなかった自分自身の潜在的な力を見つけ、それを生き生きと開花させてゆくことは、かならずや自分が世界と関わりあう、その様式に変化をもたらすでしょう。この変化はもちろん精神面にも大きな影響をおよぼしてゆきます。「ソマティック・サイコセラピー」という名前の所以はここにあります。つまり、somaに働きかけることがサイコセラピーの側面もあわせもつということを示しているのです。

身体と精神の関係については、リラクセーションスペース蓮で2ヶ月に1回おこなわれている心身医学レクチャーで、さまざまな視点からお話しています。興味のある方は是非ご参加下さい。

somaの話をするだけで、こんなに長くなってしまいました。またの機会にセンサリー・アウェアネスについても詳しくお話したいと思います。

それにわたしのもう一つの専門分野、東洋医学的身体観もいずれお話できればと思います。こちらは連載にでもしない限りはなかなか終わらないでしょうが・・・

最後になりましたが、読者の皆さまが、どうか、健康で生き生きとした人生を歩まれますように
そして多くの実りがその人生にもたらされますように。