2009年11月アーカイブ

こんにちは。バイオフィードバック担当Yです。
 

私はよしもとばななさんが好きで、彼女の本はほとんど読んでいます。

 

最近、ずっと以前に読んだ「ハゴロモ」をもう一度読みました。本棚に並んでいるいろいろな本からふっと手を伸ばしてとったのが「ハゴロモ」でした。

 

本は、読むたびに心が揺れるところが違います。今回、「あれ...、前に読んだ時と違う...」と思いながら読みました。以前読んだときは、川が人の心にもたらす存在感や、失恋から時間を丁寧にたどっていく主人公に対して、思いが残ったのを覚えています。

私も若かったし(!)、家の近くに川があったので、同調できるところに思いがいったのでしょう。
 

今回は、主人公の友だちのお母さんの様子に心が動きました。

そして、本のちょうど真ん中ごろに出てくる言葉にピッときました。主人公ほたるは、失恋の痛みと都会の疲れを癒すために、川が流れる故郷に戻ってきました。

 

そこで偶然、スキーのインストラクターをしているみつるくんという男性と出会います。

みつるくんはお母さんと二人暮し。みつるくんのお父さんは事故で亡くなってしまったのですが、お母さんはその事故のショックで、ずっと家にこもり、食事も満足にできない状態になっていました。

 

お母さんのことを二人が話しているとき、みつるくんは次のように言うのです。
 
 「母は昔から、意志が強く、俺から見ても、心の力はものすごく強い。でも、体が弱っていくことをおろそかにしすぎなんだ。

 

俺は、体を動かすことで生計をたてているから、よくわかるんだ。体は心と連動して、微妙な力を発揮している。心が弱っていても、体を動かしていることで最低限の何かが保証されることはたくさんある。だから、体はああいうふうに機能を全く使わないでいると、そのうち、心を支配するほど弱っていくんだよ。

 

それがとりかえしのつかない段階にならないといい......っていうのが、今、たったひとつ心配していることなんだ。心の強い人は、たいてい心さえしっかりしていれば体はなんとかなる、って体のことをばかにしているんだ。でも人って、ある線を過ぎると、こんどは体が弱っていることが心を引っ張っていってしまうんだ。」
 

 

今回読んだときにここにピッときたのは、やはり、私が臨床心理の仕事をし、バイオフィードバックを始め、こころとからだのことに、気持ちもからだも向いているからなんだろうと思います。

 

仕事を重ね、たくさんのクライエントさん、患者さんと出会い、こころとからだについて、いろいろなことを考えたり、感じたりする毎日。

 

そういう私の変化が、読書にも現れていたようです。

みつるくんが言うように、「体は心と連動」することを、仕事を通して、そして私自身を通して実感しています。
 

さて、この後。

 

みつるくんのお母さんは、少しずつ回復していきます。

それには不思議な出来事が関わっているのですが、きっとそれよりも、時間をかける、ということが大切だったのだと私は受け取っています。

 

それはただ時間が過ぎていくのを過ごすのではなく、必要な時間をかけるということなんだろうと思います。悲劇に見舞われたみつるくんのお母さんは、毎日どんどん弱っていっていましたが、それしかできませんでした。

 

それはつまり、そうやって何もできないでいることが自分に必要なのだということを、自分でわかっていたのだと思います。でもそのことが、お母さんが少しずつ回復していくのに必要なことでした。

 

主人公のほたるも、いつの間にか時間をかけたことで、失恋の痛みから回復していきます。最後のほうで、ほたるはこんなふうに考えます。

 

「私は、時間をかけて、自分がちゃんと流れ着くようなところへ行こう。」

 

からだは、こころが感じたり、頭が考えたりする時間とは違った時間を過ごしているかもしれません。

私に必要な時間。からだもこころも頭も、それぞれの時間をかけること。

 

今回の「ハゴロモ」から感じたことでした。

 

2011年7月

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